誠ノ桜 -桜の下で-
「では紹介しよう。広間まで来てくれるかな?」
「ええ」
幹部連中はもう広間に集めているらしく、着
くと中がざわめいていた。
「…皆、待たせたな!」
近藤がそう言うと、一瞬で静まった。
普通ならかなり入り難い空気なのだが、凜は
特に気にもせず足を踏み入れた。
「会津藩松平公直属部隊隊長、水城 凜。
松平様の命より、今日からお世話になります」
浅く一礼した凜に、また室内がざわめく。
綺麗だの、噂通りだの。
「表向きでは異動で壬生浪士組に入ったとい
う事になっているので、お願いします」
芹沢一派にお目付役だとばれない為に、表向
きはそうなっていた。
壬生浪士組での役職は総隊長(ソウタイチョウ)。
あまり会津藩での立場と変わらないような気
がしないでもないが。
正式な場での自己紹介が終わり、凜は中庭に
足を踏み入れた。