誠ノ桜 -桜の下で-



そう言って沖田が凜の目前にちらつかせたの
は、綺麗な色をした金平糖だった。

甘味に目がない凜は、ごくりと生唾を呑む。


「…食べたい?」

「食べたい」


即答した凜にクスクス笑いながら、沖田は再
び部屋へ入った。


「俺、金平糖が一番好きなんだよね」

「私も好き、金平糖」


金平糖を食べて上機嫌になっているのか、凜
は可愛い笑顔を浮かべた。


(…………っ……)


不意打ちの笑顔にドキリと胸が鳴る沖田。

当の本人凜は、思いもせずに金平糖を頬張っ
ている。


「…………ねぇ」

「何?」


キョトンとする凜に、沖田は金平糖を一粒差
し出した。


「はい、あーん♪」

「あーん…?」


気がつけば最後の一粒。

食べたいが、羞恥心が勝る。


「……いらない」

「素直じゃないなぁ」


と言って最後の金平糖を食べる沖田。



< 38 / 154 >

この作品をシェア

pagetop