誠ノ桜 -桜の下で-



凜はじとっと沖田を睨んでいたが、急にふと
天井を見上げて立ち上がった。


「金平糖、ありがと。私仕事があるから」

「え、うん。行ってらっしゃい」


ひらひらと手を振り、明らかに出て行こうと
しない沖田を無理矢理立たせて追い出す。

凜は沖田が部屋へ戻ったのを確認すると、ま
た上を見て呼び掛けた。


「烝」

「やっぱばれてたか。準備あるから、行くで」


天井からサッと降りてきたのは、山崎だった。


「ほな行こか、総隊長♪」


山崎の妙なノリを無視し、先に歩き出す。

会津にいた時からの慣れっこなのだ。






――…


「はぁ…」


島原の一室、凜は盛大に溜め息を吐いた。

既に山崎が話を付けていたらしく、着いて
直ぐに着付けやら化粧やらが始まった。


「綺麗やのに…、何で溜め息?」

「煩い」


芸者の格好、というのがどうも嫌らしい。



< 39 / 154 >

この作品をシェア

pagetop