誠ノ桜 -桜の下で-
凜の抵抗も虚しく、お座敷に到着。
「帰りた「ほな開けるでー」
小さく山崎を睨みながら、凜は開けられた襖
の陰に隠れた。
「お待たせしましたー副長。見てください、
これが"女装"した凜…ってあれ」
後ろを指差すも、凜がいない。
そろりと襖の陰を見れば、凜が腕を組んで
頬を膨らませていた。
「……まちごうた、芸者の格好した凜や」
"女装"と言われたのが特に気に入らなかった
のか、言い直すと渋々出て来た。
瞬間、少数の座敷が静まり返る。
「…綺麗」
一番最初に口を開いたのは、沖田だった。
凜は目をパチパチと瞬かせ、沖田を見遣った。
「ありがとう」
困ったような笑顔を浮かべ、そう口にする。
一種の二人だけの空間が出来ていた。
「すげー…やっぱ素がいいだけあるわ」
「だな。袴着てるのが勿体ねぇよ」
「み、見違える…いや普段も綺麗だけどっ」