誠ノ桜 -桜の下で-
ニッコリと笑う凜に、芹沢は完全に騙された。
長居すると色々と面倒な事になる可能性が高
くなるので、凜はスッと立ち上がった。
「すみまへん。この後もお座敷に行かなあきま
へんので、この辺で失礼します」
「うむ、仕方あるまい」
芹沢は凜を気に入ったのか、残念そうに呟く。
山崎も同時に出ると怪しまれるかもしれない
為、時間差で芹沢一派の座敷を後にした。
先に上がって着替えていた凜は、山崎を待っ
て土方に報告をしに行く。
「いやー、勿体ないわぁ。もうちょっと遊女の
格好してれば良かったのに」
「嫌」
山崎の言葉を一刀両断し、凜は襖を開けた。
「土方」
「おま……はぁ。ま、いいか。で、どうだった」
土方は凜に突っ込むのを諦めたらしく、密偵
の報告を促した。
「収穫ありやで!」
「京中の民家や店から、資金の調達と称して金
銭を巻き上げていたようです」