誠ノ桜 -桜の下で-
よく耳を澄ませば、かっこいいだのと町民が
耳打ちをしている。
凜は改めてよく沖田を見てみた。
「かっこいい…ねぇ」
はぁと溜め息を吐く。
確かに沖田は整った顔立ちだ。
だが凜は特に気にする素振りも見せず、再び
団子を口に運んだ。
「ご馳走様でした」
パンと手を合わせてそう言い、宮部を放って
素早く勘定を済ませた。
「美味しかった。ご馳走様」
「いいえ。おおきに」
凜は店主に軽くお辞儀をすると、チラと宮部
に視線を向ける。
「薫、帰るよ」
「え、もうそんな時間?」
んーっと伸びをする宮部を待つ事なく、凜は
一つに結った長い髪を揺らして歩き出した。
「ちょ、待ってよ隊長ーっ!!」
そう言って慌てて凜を追い掛ける宮部の姿を
見つめて、沖田が呟いた。
「………女隊長…」