誠ノ桜 -桜の下で-
呑み慣れていないからなのか、たったの一杯
で舌が回らなくなっている。
そっと背中を摩る沖田をジッと見つめると、
ふにゃりと笑った。
「な……」
「……お酒」
「えっ?」
「もっと、お酒…」
一瞬躊躇った沖田だったが、段々この状況が
楽しくなってきてしまった。
直ぐに酒を注いでやると、凜はまた一気に
呑み干した。
「もっと」
「はーい」
「総司、やり過ぎだ」
六杯目になった時、漸く斎藤が止めに入った。
だが酒の入った盃を片手に斎藤を見上げてい
る凜は、呑むのを止める気配がない。
「一」
「な、何だ」
目を伏せて斎藤を呼ぶと、酒を一杯グイッと
流し込んだ。
「…お酒…おいひいね」
だから、と上目遣いで続ける。
「呑ませて…?」
涙を目に浮かべる凜に、斎藤は完全にクラッ
と来ていた。