誠ノ桜 -桜の下で-
「……………」
赤面したまま固まる斎藤を、沖田は恨めしそ
うに見てまた酒を注ぐ。
「ん…、そ…だ」
今度は少し口を付けた所で、凜が思い出した
ように沖田を見た。
「総司も、呑む?」
そう言って差し出されたのは、凜の呑みかけ
の酒が入った盃。
「え」
沖田は二、三度目を瞬き、困って凜を見た。
凜は何も知らずに首を傾げる。
間接キスというのは、この際置いておいて。
一つの盃で男女が酒を呑み交わすという事は
結婚式を挙げるようなものなのだ。
「凜、ちゃん。その…」
流石の沖田も言いづらいようで、何度も目を
泳がせていた。
「んー…、眠い……」
段々眠くなってきたのか、凜はうとうとと
目を瞬く。
耐え切れず倒れて眠った凜を見て、沖田は無
意識に安堵していた。
「……ま、つ………さま…」