誠ノ桜 -桜の下で-



土方は『あぁそうか』と納得した。

もう、使命を果たしたのだから。


「構わねぇが…そのまま帰るのか?」

「松平様次第よ。情報が少なければまだこっち
に残る事になる」


そうか…と曖昧な相槌を打つ土方。


「お前は…帰りたいのか?」

「…当たり前よ。私は、松平様をお守りしたく
て…ここまで剣の腕を磨いたのだから」


一瞬、凜の意志が揺らいだ気がした。

何かに迷っているのか、凜は目を逸らした。


「じゃ、また会えたら」


だが凜は少しも迷っているという表情を浮か
べず、颯爽と身を翻した。

土方はただ、黙って背を見つめていた。








「―――と、いう事です」


会津藩邸に戻った凜は、松平に全ての情報を
伝えた。

松平は「うむ…」と悩ましげに声を漏らし、目
を伏せている。


「…致し方ない。芹沢 鴨及び芹沢一派を一掃
致す役目を、近藤派に授けよう」



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