誠ノ桜 -桜の下で-



目を開いた松平は、家臣に書状を書く用意を
させた。

その場で直ぐに書くと、凜に手渡す。


「姫…いや、凜」

「はい」


凜々しく、普段は『姫』と呼ぶ松平が『凜』
と口にした。


「それを近藤殿に届けてくれ。それから、重要
な任務を托す」


一度言葉を切った松平は、しっかりと凜を見
据えた。


「芹沢一派暗殺計画に同行してくれ。今度は宮
部も共に連れて行け」

「承知しました、松平様」


深く礼をすると、凜は宮部の下へ向かう。




「…薫」

「凜ーー!!会いたかぶはっ」


しかし部屋まで行く必要もなく、どこで聞い
たのか宮部が走ってきた。

抱き着こうとしてきたので、さっと避けると
壁に激突した。


「ひど…俺可哀相…」

「煩い変態。そんな事より、重要な任務よ」


『そんな事より』で片付けた凜に、宮部は
「相変わらず冷たい」と不満を漏らす。



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