誠ノ桜 -桜の下で-
「…凜ちゃん、もしかし「薫っ、試合しよう!」
「へ?何、いきなり…」
沖田の言葉を遮り、ぐいぐいと宮部の背を押
して道場へ向かおうとする。
しかし気になったのか、一度振り向く。
やはり目が合うと頬に熱を感じた為、直ぐに
また前を向いたのだった。
「あの時の、口づけ…覚えてる……とか…?」
凜の反応に、沖田は笑みを浮かべていた。
「いっ……たぁぁああ!!」
凜達が道場へ行って間もなく、宮部の悲痛な
叫び声が響いた。
「何、八つ当たり!?」
「違う煩い立て!私がいない間に弱くなったん
じゃないの、薫」
な…何のこれしき、と熱り立って宮部が立ち
上がる。
「で、松平様に何もなかったでしょうね?」
「当たり前…だ、よっ!」
ひゅん、と凜の肩すれすれを竹刀が通る。
「甘い」
その瞬間には、宮部の腹部に凜の竹刀が命中
していた。