誠ノ桜 -桜の下で-



「…凜ちゃん、もしかし「薫っ、試合しよう!」

「へ?何、いきなり…」


沖田の言葉を遮り、ぐいぐいと宮部の背を押
して道場へ向かおうとする。

しかし気になったのか、一度振り向く。

やはり目が合うと頬に熱を感じた為、直ぐに
また前を向いたのだった。


「あの時の、口づけ…覚えてる……とか…?」


凜の反応に、沖田は笑みを浮かべていた。








「いっ……たぁぁああ!!」


凜達が道場へ行って間もなく、宮部の悲痛な
叫び声が響いた。


「何、八つ当たり!?」

「違う煩い立て!私がいない間に弱くなったん
じゃないの、薫」


な…何のこれしき、と熱り立って宮部が立ち
上がる。


「で、松平様に何もなかったでしょうね?」

「当たり前…だ、よっ!」


ひゅん、と凜の肩すれすれを竹刀が通る。


「甘い」


その瞬間には、宮部の腹部に凜の竹刀が命中
していた。



< 61 / 154 >

この作品をシェア

pagetop