誠ノ桜 -桜の下で-



「…芹沢さん、本当は優しい人なんだよ」


悲しげに揺れる瞳に、凜は顔をしかめた。


「いくら根が優しくても、行いが悪いようでは
救い様がないわ」


俯く沖田から目を逸らすようにして、凜は部
屋の襖を開けた。


「…………同情は無用…」


ぽつりと呟き、凜は布団に潜った。




――…



翌朝、土方から全隊士に今夜は宴だと告げら
れた。

それも、芹沢一派暗殺の計画の内だ。


その後、凜は壬生寺に足を運んだ。


寺では既に、子供達が遊んでいる。

そしてそこには、芹沢の姿があった。


「お前は確か…近藤の所の総隊長であったな」

「水城 凜と申します、芹沢局長」

「うむ。……はて…どこぞで見た顔じゃな」


凜は内心面倒な事になったと思いつつ、表面
では笑顔を作った。


「芹沢さんとは、初対面ですが…お会いしまし
たでしょうか」



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