誠ノ桜 -桜の下で-
「……いや、気の所為のようだ」
凜の様子に、芹沢は疑いの色を消した。
「何をしていたのですか?」
ふと辺りを見回して、凜が問う。
子供達しか見当たらない。
「遊んでおったのだ」
「遊び、ですか?」
意外だとでも言うように、凜は目を丸くした。
そんな凜に、芹沢は口を開く。
「横暴な儂が遊ぶなど、可笑しかろう」
自嘲的な笑みを浮かべる芹沢に、凜は慌てて
「とんでもない」と首を振った。
「噂も存じてますが、芹沢さんは優しい方だと
聞いています」
ニコと笑う凜に、芹沢は嬉しそうに「そうか」
と呟いた。
「童(ワラベ)は正直で裏がない。…まるで、心が
洗われるようだ…」
目を細めて子供達を見る芹沢は、本当に優し
い表情をしていた。
屯所へ帰った凜は、縁側に腰掛けて夕日を眺
めていた。