誠ノ桜 -桜の下で-
「松平様、只今帰りました」
「おぉ姫!」
待っておったぞ、と松平は嬉しそうに笑顔を
浮かべた。
「姫じゃありません。…何かご用でしたか?」
「いや何も」
「そうですか。では、失礼します」
松平は宮部に用があるのか、いつもは凜につ
いて来るが今日は真面目な話をしていた。
凜は会津藩士の剣の稽古の為、備え付けの道
場へ向かう。
『お疲れ様です、隊長!!』
「お疲れ様。続けて」
『はい!!』
道場の扉を開けた瞬間、藩士は一斉に凜に頭
を下げて声を揃えた。
藩士が凜を尊敬している証拠だ。
凜は暫く藩士の稽古の様子を見て、夕暮れ頃
になった時急に竹刀を取った。
「今から私が稽古をつける。順番に来て」
『はいっ!!』
ずっと稽古で疲れている筈の藩士は、それを
聞くと嫌がるでもなく寧ろ嬉々とした表情。