誠ノ桜 -桜の下で-



何かを考え込むように、ただボーッと沈み行
く夕日を眺めて…グッと唇を噛んだ。


「……凜ちゃん?」


ハッと顔を上げれば、沖田の顔があった。

それも、かなり近くに。


「っ、な……何」


珍しく気配に気付かなかったのか、一瞬たじ
ろいで冷静を装う。


「んや、考え事してるみたいだったから」


キョトンとした凜は、クスッと笑った。


「昨日と逆ね」

「…そうだね」


沖田もクスリと笑うと、凜は懐かしげに空を
見上げて口を開いた。


「私、小さい頃に両親を亡くして…途方に暮れ
ていた所を、松平様に拾われたの」


両親が何故亡くなったのかは覚えていないの
だけどね、と自嘲気味に笑って続ける。


「それからはずっと…松平様の為に生きよう、
命を懸けてお守りしよう、って…誓った」


沖田は黙って、凜と同じように空を眺めて話
を聞いていた。



< 70 / 154 >

この作品をシェア

pagetop