誠ノ桜 -桜の下で-
何かを考え込むように、ただボーッと沈み行
く夕日を眺めて…グッと唇を噛んだ。
「……凜ちゃん?」
ハッと顔を上げれば、沖田の顔があった。
それも、かなり近くに。
「っ、な……何」
珍しく気配に気付かなかったのか、一瞬たじ
ろいで冷静を装う。
「んや、考え事してるみたいだったから」
キョトンとした凜は、クスッと笑った。
「昨日と逆ね」
「…そうだね」
沖田もクスリと笑うと、凜は懐かしげに空を
見上げて口を開いた。
「私、小さい頃に両親を亡くして…途方に暮れ
ていた所を、松平様に拾われたの」
両親が何故亡くなったのかは覚えていないの
だけどね、と自嘲気味に笑って続ける。
「それからはずっと…松平様の為に生きよう、
命を懸けてお守りしよう、って…誓った」
沖田は黙って、凜と同じように空を眺めて話
を聞いていた。