誠ノ桜 -桜の下で-
「それぐらい理解しておいた方がいいわよ。
……鬱陶しいって」
「あれ何か変わってない!?話変わってない!?」
煩いとばかりに耳を塞ぐ凜の目の前に、いき
なり山崎が現れた。
「よぉーお二人さん。仲ええなぁ」
「やっぱ「どこが」
動じる事もなく寧(ムシ)ろ眉を寄せて答える。
「凜ちゃん酷い…。俺達何年一緒にいると思っ
てるのさ」
「高が六年よ」
「『高が』って止めて!」
「ほー、結構な付き合いやん」
凜と宮部が出会ったのは、凜が十歳で宮部が
十一歳の時だ。
「松平様に比べれば、薫との付き合いなんて米
粒程のものよ」
「凜ってほんま松平様命なんやなぁ」
しみじみと呟く山崎に、凜は目を逸らす。
「まぁ…命の恩人だからね」
一瞬の憂いげな凜の表情を見逃さず、宮部は
眉を寄せた。
「って!凜、時間とか大丈夫なの?」
「後ちょっと」