誠ノ桜 -桜の下で-
明るい声で言うと、宮部は芹沢の方を見た。
既に酔い潰れている。
「凜……っていない!」
「さっきどっか行ったで」
似た者同士話していた最中、凜は外にいた。
「迷っているの?」
「あぁ…凜ちゃん」
先程から沖田の姿が見えないと思っていた凜
は、外にいた沖田の所にいた。
ずっと考え込んでいたのだろう。
「…俺はね。凜ちゃんが松平公を想うように、
近藤さんが大好きなんだ」
ニッコリと、嬉しそうに笑う。
凜は島原の壁に凭れて話を聞いた。
「あの人の為なら、きっと…芹沢さんだって、
斬れるんだよ」
でも、と眉を寄せて呟く。
「やっぱり俺は、鬼には成り切れないなぁ…」
切なげに紡がれた言葉に、凜は俯く。
そして、口を開いた。
「当たり前よ。…私だって」
ぼんやりと空を見上げれば、厚い雲があった。