誠ノ桜 -桜の下で-
「ほう、沖田と水城が来たか」
芹沢の部屋へ入って、二人は呆気に取られた。
泥酔した筈の芹沢が、あろう事かどっかりと
座って待ち構えていたのだ。
「新見の弔い宴などと、よう言ったもんだ…。
次は儂の番だと思っておった」
芹沢は、覚悟を決めているようだった。
静かに目を伏せ、じっと待っている。
………最期の、時を。
「芹沢先生!芹沢先生!!」
沖田が芹沢に一歩近付いた時、部屋の前から
女子の声が聞こえた。
「梅(ウメ)、何故来たのだ!」
梅と呼ばれたその女子は、襖を開けて中に飛
んで入ってきた。
「嫌や、あたしだけ置いて逝かんといてよ!!」
目の前で繰り広げられる昼ドラ的展開に、
凜は沖田に尋ねる。
「あの方は…?」
二人には聞こえないように小声で聞くと、
沖田は悲しげに笑った。
「芹沢さんの奥さんだよ」