誠ノ桜 -桜の下で-
「業と隙を作って敵を誘う!!返事!」
「は、はい!!」
凜の稽古が始まった。
一人一人の相手をし、個人別の的確な助言を
短く紡ぐ。
「隙を作るなら必ず守る!!」
「っはい!!」
会津藩士総勢はかなりの人数。
それを凜一人で相手をするというのは相当な
重労働なのだが……。
凜はいつも、疲れたという様子を欠片も見せ
ないのだ。
「――今日は終わり。お疲れ様」
『ありがとうございました!!』
しかし今日の稽古はいつもより幾分早く終わ
らせた。
この後は重要な任務があるのだ。
「お疲れ様です、凜隊長」
竹刀を片付けている時、凜の背中に声を掛け
る一人の男。
彼は犬山 暁(イヌヤマ アキラ)、優隊士。
壬生浪士組で言う幹部のような役職。
そしてその隣で大きな欠伸をしている男は
氷上 諒(ヒカミ リョウ)、優隊士。
こちらも同じ役職だ。