誠ノ桜 -桜の下で-
「済まないな、沖田」
「ありがとう、お嬢さん…」
最期に一言贈ると、刀を振り下ろした。
肉を裂く音と血の吹き出す音は、二人の耳に
深くこびりついた。
「土方」
「あぁ…終わったか」
凜と沖田は、土方の下へ報告に来た。
周りには、何人かの芹沢派の者が血溜まりの
中に倒れている。
「逃げた輩がいるらしい。今、原田と宮部が追
ってる」
腕を組んで壁に凭れていた土方は、顔を上げ
て凜達を見た。
「お前等はもう休め。後は俺達がやる。ご苦労
だったな」
「「はい」」
二人揃って迫力のない返事をして、自室へ向
かう。
「あ…」
部屋に入る直前で沖田が声を上げた為、凜は
襖に手を掛けたまま沖田を見た。
「どうしたの?」
凜が尋ねると、沖田は言いづらそうに口を開
いては閉じを繰り返す。