誠ノ桜 -桜の下で-
言葉にこそ強い意志があるものの、凜は俯い
ていた。
――本当は迷っている
そんな感情を表しているのだ。
「なぁ、水城」
「何?」
土方にしては優しげな声が聞こえ、凜は顔を
上げて土方を見た。
声に似つかわしく、優しい表情だ。
「恋ってな、人を変えるんだよ」
『恋』
どこか、その言葉に引き付けられる。
「それを嫌だって言う奴がいる。……でもな、
俺ぁそれでいいと思う」
「………何が、言いたいの」
絞り出した声は、震えていた。
妙に納得してしまって、動揺しているのだ。
『私は総司が好き』
そう、認めてしまったから。
「水城。お前、迷ってんじゃねぇのか?」
凜の瞳が揺れ動く。
もう止めてと、心が叫んでいる。
「だったら何も、残れば「煩いっ!!」
…初めてかもしれない。
凛がこんなに声を荒げたのは。