《短編》夏の雪
すぐに封はべりべりと破られた。

開け方まで子供みたい。


それよりここ、【花火禁止!】の看板の前だってあんたら気付いてる?



「怒られても知らねぇぞ」


呆れ顔で、修司くんはポケットからライターを取り出した。


何だかんだであんたもすんのね、花火。

ちょっと意外。



雪ちゃんは、早速花火に火をつける。



その手にある花火から、オレンジの閃光が音と共に噴射する。

煙が海風に舞う。


夏の匂いがする。



あたしも自分の分を持ち、借りたライターで火をつけようとした瞬間、



「火傷するかもだから、貸して」


雪ちゃんはあたしの手にあるライターを奪う。


びっくりした。

と、同時に、あたしの花火に火がつけられた。



白い閃光が火花を散らす。



4人分の花火から出た煙が、風に流され辺りを包む。


目が痛かった。

だからなのか、なぜだかあたしは泣きそうになった。



「修ちゃん、ロケットとネズミはー?」

「あれすげぇ値段高ぇの知ってんだろ」

「ケーチ!」

「じゃあ自分で買って来いや」



笑い声と、閃光と、煙と、海の匂い。
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