《短編》夏の雪

散々遊びまわり、花火がなくなったところで、あたし達は車に戻った。


虚脱感。

でも悪くない疲労に、ちょっと眠くなってきたあたし。



「そろそろ帰ろうか」


そう言ったのは、雪ちゃんだった。


これから口説かれる時間に突入するのだと思っていたあたしは、少し拍子抜けだった。

でも、それは彩音も同じだったらしく、



「えー? まだ帰りたくないよー」

「ははっ、ごめんねー。でもきみら、明日も学校っしょ? 俺らだって、さすがにこれ以上、制服着てる子らを連れ回すとねぇ」

「………」

「オマワリさんとかに怒られっから。つーか、職質されたら、きみらだって学校に言われちゃうわけだし。だから、また次回ってことで」


紳士ぶってんだろうか。

それともさっさと帰したい?


まぁ、どっちにしても、『次回』はなさそうな予感がした。



不貞腐れた顔をする彩音を適当になだめ、雪ちゃんは車を走らせる。



「彩音ちゃん、家どこ?」

「……M町」

「夏美ちゃんは?」

「あたし、S町」


あたし達の答えを聞いた雪ちゃんは、



「んじゃあ、彩音ちゃん先に送るわ。そっちのが近いし」


そう言われた彩音は、さらに頬を膨らます。



可哀想な彩音。

あんたの好きな雪ちゃんは、あんたとどうにかなる気はないらしいよ。


白牛乳の恨みだ、ざまあみろ。
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