《短編》夏の雪
あたしの隣の修司くんは、帰る道中、ずっと携帯をいじっていた。
女とメールでもしてんだろうか。
まぁ、どうでもいいけど。
いじっていた携帯を閉じた修司くんは、なぜかあたしを一瞥した後、運転する雪ちゃんに声を掛ける。
「なぁ、俺これから用事できたし、駅で降ろして」
「おー、わかった」
ほんとに解散するらしい。
海ではしゃいだことを思い出す。
何だか祭りの後っぽくて、ちょっとだけ虚しさに支配された。
駅に到着し、修司くんは車を降りる。
「じゃあな」
それだけかよ。
と、突っ込みそうになったが、別にあたしも掛ける言葉なんてないから、「ばいばーい」と適当に手を振った。
修司くんと別れ、また車は走り出す。
「ねぇ、雪ちゃん! 今度いつ遊べるの?」
「わかんねぇ。俺忙しいから、時間が合えば」
「えー? それっていつよ!」
「いつだろうねぇ」
後部座席のあたしはすごくお邪魔虫っぽくて。
いたたまれなくて、無言のまま、窓の外の流れる景色に目をやった。
ふたりのクスクス笑う声が耳に障る。
あたしも修司くんと一緒に、適当な理由をつけて駅で降りてればよかったなと、今更思う。
最悪。