《短編》夏の雪

やらかしちゃったのは、彩音じゃなくて、あたしの方。


どうしましょ。

だけどもうヤッちゃったもんはしょうがないから、とりあえず置いといて。



「俺、ぶっちゃけあの彩音ちゃんっての、苦手。みんなで騒ぐ分にはいいけど、常に一緒にいると疲れるし」


それは本心?

それともあたしを落とそうとする作戦?


どっちでもいいけど、『常に一緒にいると疲れる』の部分には同意。



雪ちゃんはシャツも着ないまま、運転席でシートにもたれかかり、情事の余韻を煙草の煙と共に吐き出した。



「あたし、これがバレたら友情にヒビ入るよ。どうしてくれんの」

「ははっ、大変だね。頑張れー」


他人事か、こいつ。

咥え煙草で手をひらひらとさせる雪ちゃんに、やっぱり呆れるあたし。


まぁ、一夜限りの過ちってことで片付けよう。



「ねぇ、あたしカレシいるんだけど」

「で?」

「………」

「俺もカノジョいるけど、いいじゃん、どうでも」


何がいいんだか。

あっけらかんとして言い放った雪ちゃんは、「でも面倒くさいから彩音ちゃんには言わないでね」と付け加える。


こいつまさか、彩音にもこういうことするつもりなんだろうか。


いいや、もう、どうだって。

こいつとのことすべてに、意味はない。 



「あんたほんとろくでなしだね」

「いやいや、きみには負けますよ」


そりゃそうだ。
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