《短編》夏の雪
それから3日後の夜、あたしもカレシと喧嘩別れした。
ムカついて、ムカついて、怒りが収まらないまま帰宅して、ベッドにダイブした瞬間、携帯が着信音を鳴らした。
カレシ、じゃなくて、元カレが、まだ何か言いたくて電話を掛けてきたのかと、それを持ち上げてディスプレイを確認した瞬間、
【着信:雪ちゃん】
驚きすぎて二度見した。
あいつ、ほんとに掛けてきやがった。
どうしようかとは思ったものの、もしかしたらあたしは、誰かに愚痴りたかったのかもしれない。
「ふぁーい」
寝転がったまま、通話ボタンを押した。
「ちーす。何してんのー?」
この前となんら変わりない様子。
あたしは息を吐く。
「今帰ったー。さっきカレシと別れたー」
「マジで?」
「マジでー。殴られたから殴り返してやったら、すんごい修羅場になって。ほんと最悪だったからね」
「うわー、怖っ! そりゃあ、ご愁傷さまでした」
棒読みですか。
「てか、何で電話してきたの?」
「あ、それそれ!」
雪ちゃんは思い出したように言って、
「今、そっち向かってる」
「……は?」
「暇してる気がしたから、迎えに行こうと思って」