《短編》夏の雪
雪ちゃんもだけど、勝手なヤツの友達も、やっぱり勝手な人間らしい。

あたしはこめかみを押さえた。


どうしたものか、この状況。



「俺のことはお気になさらず」


武士みたいな口調で言ったドレッド頭の男は、本気でゲームをしに来たのか、オープニング画面を凝視しながら、後ろ手に手をひらひらとさせる。


アホみたいな音楽が流れてきた。

気にするなって方が無理だっつーの。



「まぁ、いいけどさ」


と、肩をすくめた雪ちゃん。

よくないでしょ、と、あたしは叫んでしまいそうだった。


が、こいつらに何を言っても意味がないことを、あたしはよーくわかってるから、諦めてベッドに大の字で寝転がる。



「夏美ちゃん、寝るのー?」

「寝る」

「マジで寝るのー?」

「寝る。疲れた」


とにかくもう、色々と気疲れした。


雪ちゃんの部屋だからどうだとか、気にしてらんない。

てか、そんなことをいちいち気にしてたら、こいつらの言動になんてついてけない。



「適当な時間になったら起こしてね。ってことで、おやすみ」


あたしは不貞腐れていたのかもしれない。

ドラクエの音楽はうるさいし、雪ちゃんはボブ・マーリーを追い返してくんないし。


ベッドの掛け布団からは、雪ちゃんの匂いと共に、微かに甘い香水の匂いがしていた。
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