《短編》夏の雪
体に重みを感じて薄目を開けると、部屋は真っ暗になっていた。
あたしは首だけを動かして、状況を確認する。
あたしは雪ちゃんに腕枕されていて、そんなあたしの腰の辺りを抱き枕みたいにしてる修司くん。
狭いシングルのベッドに、3人が、川の字ともいえないすし詰め状態で。
「んー……」
もがいてみても、びくともしない。
どうしてこうなっちゃってんのかはわかんないが、とにかく重い。
だからとりあえず抜け出さなきゃと、腕を動かした瞬間、左隣にいた修司くんがドテッとベッドから落ちた。
「……いてぇ」
修司くんはむくっと起き上がり、ベッドの下から寝起き顔でこちらを見る。
「お前今、俺のこと落とした? 落としたよな? 落としたろ?」
「あ、ごめん」
とはいえ、笑ってしまいそうになる。
間抜けな恰好のレゲエの神様。
雪ちゃんが起きる気配は微塵もない。
「はぁ、マジでありえねぇ。全治三週間だぜ、これ。治療費払えよ、ひゃくおくまんえん」
ぽりぽりと頭を掻きながら悪態をつく修司くんに、
「ねぇ、それより何でみんなで寝てんの?」
「知らね」
修司くんは大あくびで、どうでもいいとでも言いたげな返答しか返さない。
そしてそのまま、首をコキコキ鳴らしながら、煙草を咥える。
何だかあたしもすっかり目が覚めてしまった。