《短編》夏の雪
待ち合わせ場所は、駅裏だった。
イケメン好きの彩音が好きになるくらいだから、まぁ、顔はいいんだろうけど、つまんなかったらさっさと帰ってやろうと思う。
暑いし、白牛乳の恨みもあるし。
「今日来るの、雪ちゃんと修司くんだって」
「ふうん」
てか、誰だよ。
手鏡でメイクの最終確認をする彩音を横目に、心の中で毒づくあたし。
と、その時だった。
「あ、雪ちゃーん!」
ロータリーに入ってきた四駆に向かって、彩音は声色を使って手を振り上げる。
おいおい、大丈夫かよ。
あたしはますます帰りたくなった。
「待った?」
車から降りてきたのは、金髪と、ドレッドの人。
どっちが“雪ちゃん”かは知らないが、さすがのあたしもぎょっとする。
こんなやつらと一緒に歩きたくはないという感じの見た目のふたり。
「夏美! 金髪のが雪ちゃんで、ドレッドのが修司くんね!」
「ははっ、どうも」
あたしは愛想笑いだった。
金髪の雪ちゃんとやらは犬みたいな顔をしてて、ドレッドの修司くんとやらは見たまんまいかつい。
これ嫌がらせですよ、彩音さん。
「とりあえず乗りなよ。あちぃっしょ?」
あたし達にそう促した雪ちゃんは、運転席へ。
彩音は当然のように助手席へと乗り込む。
わーお。