《短編》夏の雪
act 4
8月中旬。
夏休みの課題はほぼ真っ白だけど、この夏の思い出はいっぱいだった。
あたしは相も変わらず遊び呆けていた。
あれから、雪ちゃんに呼び出されると、たまに修司くんもいたりした。
洞くつ探検に行って、今度は帰りの車で修司くんが寝たので、イタズラしたらキレられたりとか、そんな感じ。
3人の時は遠出して遊んで、雪ちゃんとふたりの時はエッチしたりする。
それだけのこと。
何かが変わったとかじゃない。
だけど、そろそろ現実を見なきゃいけない気がする。
課題をやらなきゃ卒業させてもらえないかもしれないし、夏休み明けのテストも赤点だらけだとやばい。
海にクラゲが出始めて、夏の終わりの予感がした。
そんなあたしの気持ちを知ってか知らずか、この一週間、雪ちゃんからの連絡がない。
あたしから連絡すればいいのかもしれないけれど、タイミング悪く“カノジョのみっちゃん”といたりしたら面倒なことになりそうだし。
っていうか、それ以前に雪ちゃんに新しい出会いがあって、あたしはさっさと切り捨てられたのかもしれない。
自由な雪ちゃんを、あたしは、やっぱり縛れない。
「はぁ……」
携帯を眺めては、何度目かのため息を吐く。
修司くんの番号なんて知らないし。
まぁ、知ってたとしても、掛けてどうすんの、って感じだし。
「てか、あたし何でこんなことで悩んでんのよー」
悶々としていると、突然、携帯がふざけた着信音を鳴らした。
雪ちゃんだった。