《短編》夏の雪
ディスプレイを確認した瞬間、顔がへらっとなった。
雪ちゃんからの電話で嬉しくなる気持ちを、自分自身、否定はしない。
あたしは急いで通話ボタンを押す。
「ふぁーい! 超久々でビビったじゃん!」
テンション高く出てみたが、
「夏美ちゃん、今いい?」
らしくない、雪ちゃんの声。
いつもなら、『今そっち向かってるよーん』とかなのに、何かが変だ。
「どうしたの?」
あたしはいぶかしげに問い返す。
「今って家にいる? ちょっと話したいことあるんだけど、出てこれない?」
「……何?」
「電話じゃちょっと」
嫌な予感がする。
こんな雪ちゃん、あたしは知らない。
「何? 何かあった?」
「うん、ちょっと色々あってさ。まぁ、そのことも含めてね」
「色々って何? 雪ちゃんだけ? 修司くんは?」
矢継ぎ早に聞いたのに、
「あと30分くらいでそっち着くから」
とだけ言った雪ちゃんは、あたしの問いには何も答えず、電話を切った。
ぐらりと世界が歪む。
行かない方がいいと、もうひとりの自分が言っているかのように、鼓動は早鐘を打つ。
けれど、どうすることもできず、あたしはため息混じりに上着を羽織って部屋を出た。
雪ちゃんからの電話で嬉しくなる気持ちを、自分自身、否定はしない。
あたしは急いで通話ボタンを押す。
「ふぁーい! 超久々でビビったじゃん!」
テンション高く出てみたが、
「夏美ちゃん、今いい?」
らしくない、雪ちゃんの声。
いつもなら、『今そっち向かってるよーん』とかなのに、何かが変だ。
「どうしたの?」
あたしはいぶかしげに問い返す。
「今って家にいる? ちょっと話したいことあるんだけど、出てこれない?」
「……何?」
「電話じゃちょっと」
嫌な予感がする。
こんな雪ちゃん、あたしは知らない。
「何? 何かあった?」
「うん、ちょっと色々あってさ。まぁ、そのことも含めてね」
「色々って何? 雪ちゃんだけ? 修司くんは?」
矢継ぎ早に聞いたのに、
「あと30分くらいでそっち着くから」
とだけ言った雪ちゃんは、あたしの問いには何も答えず、電話を切った。
ぐらりと世界が歪む。
行かない方がいいと、もうひとりの自分が言っているかのように、鼓動は早鐘を打つ。
けれど、どうすることもできず、あたしはため息混じりに上着を羽織って部屋を出た。