《短編》夏の雪
彩音には悪いけど、こんな人たちのどこがいいんだか、さっぱりだ。
あんた思いっきり、ヤリ目的にされてるだけじゃん。
それなのに馬鹿な彩音は、それでもいいと言わんばかりの顔で、へらへらへらへら。
外の暑さ以上に、あたしにはそれがひどく癪に障る。
すべてがこの後ヤルための御膳立てのようで。
だったらさっさとヤッて終わればいい話なのに。
ほんと、くだらない。
大嫌いな白牛乳であたしを巻き込む彩音にイラつく。
「しっかし、あっちぃね」
隣のボブ・マーリーはそればかり。
お預けを喰らったやつの態度はひどい。
苦痛のようなドライブだ。
「雪ちゃーん。飴食べるー?」
「おー」
「梅ちゃんだよー」
「マジかよ。ないわー。ババアじゃん」
「ははっ。でもこれがなかなかハマるのよ」
「返品だよ、馬鹿」
「ひっどーい」
うっざーい。
と、言わなかったあたしは偉い。
前でイチャコラやってるふたりを呆れたような目で見ながら、あたしは、どうやって帰れってやろうかと思案する。