カキタレのナミダ
わたしが劇場前まで戻ると、すでに彩菜は戻ってきていた。
「チヒロくんはやっぱりすごい人気だね~」
「すっごくかっこよかったし、すごく優しい人だった!」
「渡せた?」
「うん!ありがとうって言って、ニコッてしてくれた!梅村さんはどうだった?」
「梅村さんはわたしの他に誰も来てなかったから、握手までしてもらっちゃった。【タバコちょうど切らしててん、めっちゃ助かるわぁ】って嬉しそうだったよ」
「よかったねぇ!」
「ねぇねぇ」
わたしたちがそうやってはしゃいでいると、後ろから声をかけられる。
「はい?」
振り向くと、出待ちをしていた派手な3人組の女の子たちだった。
「今日これから時間ある?」
「…えっと…」
初対面の相手に急にそんなことを言われたので、わたしと彩菜は顔を見合わせる。
「芸人とコンパしたくない?」
「えーっ!?」
突然そんな事を言われて、わたしたちは思わず大声をあげてしまった。
「シッ、大きな声出さないで」
まだ目当ての芸人が出てこないのか、関係者で入り口の周りにいる女の子たちが不審そうな目でこちらを見ていた。
「ご…ごめんなさい…それ、本当?」
「本当だよ。でも、ここじゃ目立つから、どこか入って話そうか」
わたしと彩菜はどきどきしながら、その3人についていった。