【短篇】しおり-AquaTimez-
「これから、ユカちゃん家に行くんでしょ?
…まだいるかどーかわかんないけど、彼女が寂しい想いしないで、笑って向こうに行けるよーに送り出してあげて!
そして、……自分も後悔しないよーに、ちゃんと彼女と向き合うんだょ!」

メガネの店員さんは俺にそう言い、ベンチから腰をあげた。

「…頑張って!」
「…あっ!…ハ、ハイっ…!ありがとうございます…。」

俺も立って挨拶をすると、店員さんは自販機の脇にあったクズカゴに空き缶を放り、『コンッ、カランッ!』と缶を入れた後、俺に背中を向け歩きながら、片手を軽く挙げ「じゃあねぇ。」という風な挨拶をして、そのまま歩いて行った。
カッコいいな!って思った。ユカには、あんなに強くて頼れる人がいたんだなって、そんな場所を奪ってしまったのかと思うと胸が痛かった。あの店員さんもホントは、ユカが居なくなって寂しいんだ、と思った。


俺はすぐさま、またユカのアパートに向かう為に走っていた。

もう、ユカがこの場所(まち)にいないコトも知らずに……。





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