バンドに賭けた思い(仮)



『歌うの好きだから…全然苦じゃなかった…でもだんだん家にいられる時間も学校にいられる時間も減っていって…久しぶりに学校に言ったら…先生がね私に言ったの…「歌ばっか歌って金もらっていいご身分だね」って…でも堪えられた。お父さんもお母さんも私の歌声が好きだって…お兄さんも』

少しずつ震え出す私の両手を薫君と雷斗君が片方ずつ握ってくれた

『でも…ずっと先生は嫌みを言い続けて来て…そんな時お兄さんの手術代が全部貯まって…だから止めたんだ…ラジオ番組に出るのを…また普通の生活に戻れるって思ってた…でもっ…ラジオ番組やめたその日…お父さんとお母さん…事故に遇ったんだ…やめた私を迎えに行こうとしてっ…』

堪えきれずに溢れ出す涙

『病院に行った時には…もう遅くて…頭真っ白で…そしたら先生が来て…私に言ったのっ!!!』

「蒼羅っ…落ち着け」

『「歌ってばっかだからこんなことになったんだ」って…「両親が死んだのはお前が歌ってばっかりだからだ」って…「お前が両親を死なせたもんだ」って!!!』

「蒼羅っ…」

『私…そんなつもりなかった!!!ただ…ただお兄さんを助けたかった…歌ってお母さんとお父さんを喜ばせたかったっ…それだけだったの!!!悔しかったけど…言い返せなかった…それから怖かったっ…歌えばまた先生が「お前のせいだ」って言いにくるんじゃないかって…だから…人前では歌わないようにしよう…って思って…でも歌わないでいるのは辛くて…』

「だから誰もいない屋上で歌っていたのか?」

雷斗君の言葉に無言で頷いた

「…そっか」

亮くんはそれだけ言うと優しく頭を撫でてくれた



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