茜の空



『一度、真剣に考えてちょうだい。あなたの生み出す味が長谷川ブランドになり、その次のあなたのブランドになる。店を出す前に、オーナーパティシエとしての腕も磨いてもらうわ。今すぐとは言わない。あなたが思い立った時には声をかけてほしい。』



うまく返事が出来ない。



絶句しながら先生の顔を見るので
精一杯。



『一度に言われて戸惑っているでしょう?でも私、決めたら早いのよ。1から10まで全部説明したくなるの。せっかちだってよく言われる~。』



少しおどけてみせた顔に更に
言葉を失う。



本気で言ってるとは思えない。
っていうかこんなうまい話など、
あるはずがない。



これは夢よ。
夢から覚めてこう言うの。
『チクショー!!』ってね。



『信用してないわね?無理もないわ。でもこの世界、あなたも少しは知っているでしょう?あなたのケーキを今日食べて確信したのよ。』



かの有名な長谷川ブランド。
料理界ではトップで、
洋菓子界でも上位を占めている。



『いや、まさかそんなお声をかけていただくとは思わなかったです。ありがとうございます。』



頭の中パニックだよ!!
考えれば考えるほど整理が
つかない…。










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