茜の空
『この残りはうちのパティシエに食べさせてもいいかしら?』
『あ、はい。私ので良ければ…。でも、それ甘さが強いんじゃ…。』
『いいのよ。うちの味とはまた別の味だから。新鮮味が増すと思うの。研究させなくっちゃ。』
『あの、私も何度となく長谷川ブランドのケーキ食べさせていただいてますけど、私こそあの味は出せません。本当、悔しいくらいに。まだまだだなって食べるたびにいつも痛感します。』
紅茶を飲みながら長谷川先生は微笑む。
『その悔しいって気持ちが一番大事よ。常に持つ向上心が勝利に繋がっている。パティシエに限らずどんな職でも言えることだけど、長谷川ブランドでは、一度負けて這い上がってこない人材はチームに1人もいません。まぁ、この先の詳しいことはチームに加わってからね。楽しみに待っているわ。』
『あ、ありがとうございます。』
ただただ、頭を下げることしか出来なかった。
なんか、スゴイことになってる…よねぇ!?
信じらんない…。
先生の前でまた泣いちゃうし。
だって、
『あなたの夢を約束する』とか言われて。
私の味をまた評価してくれる人が現れた。
長谷川ブランド。
世界で知られる親しみのある味。