茜の空



『ただ…もっと自分を大事にして。』



『はっ!?どういう意味だよ。』



『そのうちわかる日がくるよ。一時の感情で何もかも後回しにしないで。』



『何がだよ!それに、俺は少なくとも一時の感情なんかじゃない!』



もはや売り言葉に買い言葉だと悟る。



『そうだね…。いつだって嘘はなかった。でも、これだけはわかってほしい。』



真っすぐ君を見つめた。



お互いがお互いを尊重しなければ
成り立たないことだってあるんだよ。



押し付けがましくわかってほしい
とは言わない。
でも、好きな気持ちだけじゃ
越えれない壁もある。



だから、こう言うしかなかった。



『君と私は立場が違う。』



ゆっくりと振り返り、君に背を向けた。



顔色が変わった君。
理解してもらえるのは無理かもしれない。



出口に向かって歩き出すと、
君は腕を掴んで引き止めた。










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