茜の空
夏休みの花火大会。
浴衣姿の私に『すげーかわいい!』って
言ってくれたよね。
人ごみの中、はぐれないように自然と
手を取り合った。
思い出せば、これが初デートだったね。
かき氷を買いに行ってる間、私が1人で
いると、ナンパされちゃって、アタフタ
してたら
『おい!俺の女に何か用かよ!』って
正樹が追い払ってくれた。
『ったくもう!1人に出来ない!』
『ごめん…。』
『もう俺から離れるな。』
『ごめん…。』
帰り道も、ずっと手を握ったまま、
正樹は何も喋らなかった。
私も何て言っていいかわかんなくて、
黙って歩く。
家の前まで送ってもらい、『バイバイ』
と階段を登り始めた時、正樹は私の名前
を呼んだの。
反射的に体は動き、振り返る私の唇に
正樹の唇が重なった。