茜の空



出発まで、もうそんなに時間はない。



卒業式の翌日には日本を発つ。



この手で栄光を掴むために限界まで挑む。



人は何かを手にする時、何かを手放さな
ければならないのかもしれない。



『待っててほしい』と言った後、
少し後悔もした。
 


だってその間、準を拘束することになるから。



それでも『待つ』と言った準の想いを
信じてみようと思う。



そして自分も、それに応えてみようと思った。



家に帰れば準がいる。



たまに1人だと寂しくなる。



鍵を開けて準が帰ってきた時、思わず
抱きしめそうになった。



もうすでに、私の中に彼は住んでいる。



居ないことの方が不自然なほどだった。










< 269 / 302 >

この作品をシェア

pagetop