茜の空
出発まで、もうそんなに時間はない。
卒業式の翌日には日本を発つ。
この手で栄光を掴むために限界まで挑む。
人は何かを手にする時、何かを手放さな
ければならないのかもしれない。
『待っててほしい』と言った後、
少し後悔もした。
だってその間、準を拘束することになるから。
それでも『待つ』と言った準の想いを
信じてみようと思う。
そして自分も、それに応えてみようと思った。
家に帰れば準がいる。
たまに1人だと寂しくなる。
鍵を開けて準が帰ってきた時、思わず
抱きしめそうになった。
もうすでに、私の中に彼は住んでいる。
居ないことの方が不自然なほどだった。