茜の空



受話器越のカーリー店長は興奮しながら
話を続ける。



_これを作ったパティシエに逢いたいと絶賛されてね。迷わずユカの名をあげたんだ。なんてったって考案者はユカだからね!



久しぶりのフランス語だからなのか、
カーリー店長が普段より早口だからなのか、
言葉の意味を理解するのに時間が
かかる。



_え?どういうこと?よくわかんないよ。



_覚えてないかい?長谷川鈴江氏を。たった1人、審査員に居たはずだよ。日本人が。



審査員…?ハセガワスズエ…?



_あーっ!!



あまりにも大きな声が職員室中に
響き渡り、我に返って受話器を外して
その場で謝る。



_ハハハ!思い出したようだね。ユカは今、日本に居るとだけ伝えてあるけど連絡先を教えてほしいと言われたよ。



全身にサーッと鳥肌が立つ。



なにコレ……夢じゃないよね??



確かに居たよ!審査員席に日本人!
すごく上品なオバサマだった。
……歳は五十代ってとこ?



あのオバサマが長谷川鈴江氏!?














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