たんすの中の骨1


「そうね・・・」

「そぉよ」

はいできた、とアンは軽く私の頭をたたく。
私の長い栗毛が、ふわふわのポニーテールになっているのがわかる。
いつも思うけど、今日も素晴らしいできばえだ。
私はもう一度くるっと向き直り、ほほえむ彼女に抱きついた。

「アンー!ありがとー!」

「何!ちょっとイヴ苦しーいー!」

それでもアンは抱きつかれたままだ。
いやがったり、振り払ったりしないことを私は知っている。
だから今度は泣きついてみた。


「あの人にきもいって思われたかもしれないよーぉ!」

「きもい!!」

アンは体全体をゆらしながら笑った。ツボにはまったらしい。
しばらくすると、おもむろに私を呼んだ。


「ねぇイヴ」

「なぁにアン」

彼女の細くて長い腕が、私の背中に回る。
なんだか時間においていかれたように、私にゆっくと小声でささやいた。


「あんなへっぽこ従業員、なぁんも気にすることないよ」

「へっぽこ従業員!!」


今度は私が笑う番だった。二人して体をのけぞって、笑う。喉の奥を、太陽に見せ付けるようにして、何がなんだかわからないけど、おかしくってたまらない。


もう彼に話しかれられないかもしれないのに、ちっとも心はうずかない。

15歳の私にとって、恋なんてそんなもんだ。




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