たんすの中の骨1
「それは恋だな」
正門まで続く、桜とイチョウ並木の途中で、担任の古沢と出くわした。
「はぁ?」
にやりと指を指された私と泉は、二人して、目の前のおっさんをまじまじと見つめる。
古沢はうんうん、と仁王立ちでうなずき
「佐倉と泉は仲がいいからな。まるでカップルだ」
とうそぶいた。
「違います」
瞬時に言ったセリフが重なって、あ、と私と泉は顔を合わせる。
「こいつとは、本当に何もないんです。ていうか今日は瀬戸アンナが休みだから二人っきりなんです」
泉がうんざりした顔で古沢に説明する。
「そうです。もう、せんせい嫌い」
そうかそうか、と言いながら、古沢が私の頭をぐしゃぐしゃになでまわした。
私の「嫌い光線」はちっとも効いてない。
アンといい泉といい、なんで人の頭をたたくのか。
「お前髪ぼさぼさ」
泉は私の顔にかかった髪をはらった。
その姿を見て確信したのか、古沢はいやらしく笑い、泉を小突いた。
「やっぱお前ら、いいわ。本当は付き合ってるんだろう?」