たんすの中の骨1
思わず気持ちがぽろっと出てしまった。
目の前のレジで、おじいさん店長は大きな眼鏡を持ち上げ、にごったレンズ越しに私をみて、興味なさそうにまた新聞を読み始めた。
なおくんとはえらい違いだ。別にいいけど。
とにかく、私は15歳になっても宝物を大切にするたちだったから、こんなふうにすきな人がらみでなくすのは人生で初めてだった。
恋はときどき恐ろしい。
人の足音がする。
私は邪魔にならないように一歩本棚に近づいた。
その時。
「あの、佐倉伊吹さん、ですよね?」
振り向いた瞬間、体中の血の気がざぁあと引いていった。
サイレンは鳴らない。
「なおくん」だ。「なおくん」だぞ。