たんすの中の骨1
空っぽだ。私は何て、がらんどうなんだろう。
もっとたくさんのものを、両手いっぱいに持っていたはずなのに。
私は静かに口ずさむ。
お気に入りの、かなしい曲。
モーツァルトのレクイエム「ラリクモサ」
ひとりきりのこんな夜には、彼のことを思い出す。
私の胸は痺れるような甘い痛みに、いっそうと苦しくなるけれど。
でもその度体の芯から温かくなって、力がみなぎってくる。
フルパワーとまではいかないけれど、あともう1日くらいは生き延びられる気がする。
いいんだそれで。今はまだ、そのままがいい。
けれども記憶の中の彼のいる場所は、いつだって静かで、冷たい。