Fahrenheit -華氏- Ⅱ
まるで鬼の形相のごとく顔色を変えた俺が勢い良く喫煙ルームの扉を開けたから、
中に居た数人の社員たちがびっくりして、そして慌てて外へ出て行った。
「くっそぅ。心音のヤツめ!」
俺だってまだ水着姿の留華を見たことねぇってのに!
(下着姿ははもちろんあるけどね♪キャっ☆)
ブツブツ言いながらも、俺はタバコを取り出して電話を掛けた。
『もっし~♪』
携帯から聞こえたのは、瑠華の声ではなく、妙に明るい口調の聞きなれない女の声だった。
「え?俺、間違えた??」
『間違えてないわ。これは瑠華のよ』くすくす笑う声が聞こえて、
『ケイトでしょ?声もなかなかSexyだわ♪』とちょっとくすぐられるような、色っぽい笑い声が聞こえた。
「もしかして、心音ちゃん??」
『イエ~ス♪尾藤 心音です。はじめまして』
「あ、はじめまして。えっと…瑠華は?」
『瑠華はマッチョメンたちに囲まれてるわ~』
ま、マッチョだとーーー!!
あまりの驚き…ってか、怒りに声が出ない。
『冗談よ♪彼女は今プールで泳いでるわ』
ほっと胸を撫で下ろす。
ってか心音!!
『残念。電話がもう少し遅かったら瑠華の勝ちだったのに、ね』
「え?勝ちって??」
『ケイトが30分以内に電話を掛けてくるかどうか賭けてたのよ。勝負はあたしの勝ち♪』
「賭け―――ねぇ…」
ははっと俺は乾いた笑みを漏らした。
俺も裕二とどっちが早く瑠華を堕とせるか、で賭けてたからな―――
文句は言えません。