Fahrenheit -華氏- Ⅱ


「海に居るの?それともプール??」


『プールよ。あたしが誘ったの。瑠華は最後までしぶってたけどね』


やっぱお前の仕業か!心音ーーー!!



『なに勝手にあたしの携帯で電話してるのよ』


少し遠くで瑠華の声が聞こえた。


『掛かってきたのよ。あんたが手を離せないから、あたしが代わりに出てあげたの』


心音ちゃんの声も遠ざかっていく。


ガサガサッと音がして、





『啓?』




と、聞き慣れたやわらかい声が聞こえた。


「瑠華―――」


ほっとしたのと同時に、無性に彼女が恋しくなった。


『ごめんなさい。心音が勝手に電話に出たみたいで』


「いや。面白い子だね」


俺は苦笑いを漏らした。


俺の想像とは少し違ったけれど、美人だし面白い。


でも気が合う―――のか??


瑠華とは180°違うタイプだけど。


と、そんなことを考えながら首を捻っていると、


『あたしは掛けてこないと思ったんですけどね』


とちょっとため息混じりの声が聞こえて、俺は背筋を正した。





< 107 / 572 >

この作品をシェア

pagetop