Fahrenheit -華氏- Ⅱ
「海に居るの?それともプール??」
『プールよ。あたしが誘ったの。瑠華は最後までしぶってたけどね』
やっぱお前の仕業か!心音ーーー!!
『なに勝手にあたしの携帯で電話してるのよ』
少し遠くで瑠華の声が聞こえた。
『掛かってきたのよ。あんたが手を離せないから、あたしが代わりに出てあげたの』
心音ちゃんの声も遠ざかっていく。
ガサガサッと音がして、
『啓?』
と、聞き慣れたやわらかい声が聞こえた。
「瑠華―――」
ほっとしたのと同時に、無性に彼女が恋しくなった。
『ごめんなさい。心音が勝手に電話に出たみたいで』
「いや。面白い子だね」
俺は苦笑いを漏らした。
俺の想像とは少し違ったけれど、美人だし面白い。
でも気が合う―――のか??
瑠華とは180°違うタイプだけど。
と、そんなことを考えながら首を捻っていると、
『あたしは掛けてこないと思ったんですけどね』
とちょっとため息混じりの声が聞こえて、俺は背筋を正した。