Fahrenheit -華氏- Ⅱ


『―――い…啓』


呼ばれてはっとなった。


俺、ちょっとどこかへ行ってた…


せっかく瑠華と電話してるってのに、しっかりしろよ、俺!


「あ、ごめん。どーした?」


『いえ…お疲れのようですけど、大丈夫です?』


「大丈夫ぅ」とうな垂れながら答えたけど、「じゃねぇ!!」と思わず声を荒げた。


「瑠華が居なくて俺は孤独死しそうだよ!!」


電話の向こうでまた、クスクス笑う気配がした。


「そりゃ瑠華にはピヨコが居るからいいかもしれないけどぉ、俺はいないもん。って言ってもピヨコはいらねぇけどな」


『ピヨコ…あ、トランクに入れっぱなしだ……』


と瑠華は思い出したように、頷いた。


ってか、大事にしてるの!そうじゃないの!?





「どっちでもいーや。俺は瑠華が無事帰ってきたら、それでいい」





クスッと笑う気配がして、









『我想你』







俺は目を開いた。




“ウォーシャンニー”





それは『会いたい』を意味する中国語。







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