Fahrenheit -華氏- Ⅱ
地下のコーチエントランスから俺の愛車BMWのZ4を発車させた。
深い青色のボディにハードトップ(自動で開閉する屋根)でオープンカーにもなる。
助手席には最愛の恋人♪
って…これがデートならな…すっげぇ楽しいんだけど…
何せ今から空港に向かわなければならない。
「手が暇」と訳が分からない理由を並べては運転中瑠華の手を強引に握り、赤信号で停車する度にキスをした。
「片手運転は危ないですよ」と彼女の忠告を無視し、
「慣れてるから大丈夫」と言いながら、彼女の冷たい手を強く握った。
「お土産は何が良いですか?部……啓」
彼女はどうやら“部長”と言いかけて、“啓”と訂正したんだろう。
名前で呼び合う間柄になってまだ日が浅いから仕方ないと言えば仕方ないんだけど。
「あのさぁ。そのブって言いかけて啓って言うのやめてくれない?ブサイク啓みたいじゃん」
「…………」
瑠華は助手席で黙っている。
おいっ!そこは否定しろよ!!
いいもんねっ!瑠華ちゃんにとって俺は好みの男じゃないってことぐらい知ってるもん!
何せ、前の男はハリウッド俳優のオーランド・ブルームだったからな。いや、本人じゃなく、似てるってことね。
あんなイケメンと比べられたら、俺なんて塵だけど…
ふ……言ってて悲しくなってきたぜ。
一人で百面相していると、瑠華はきゅっと手を握り返してきた。
「あたしは好きですよ?啓のその綺麗な瞳が」