Fahrenheit -華氏- Ⅱ


「そう言えば体調悪そうですね。顔色悪い…」


佐々木は鞄をデスクの上に置いて、心配そうに俺を見下ろしてくる。


俺の部下が佐々木でよかった。


こいつには裏なんて微塵も感じれない。きっと本気で心配してくれてるのだろう。


バファリンみたいなヤツ……
※バファリンの半分は優しさから出来てます……なんてね(*´ェ`*)


「そっかぁ?まぁちょっと寝不足だからな…」


俺は佐々木の言葉に素直に返した。


事実寝不足のせいでか知らないけれど、体が重くてだるい。


「遊びすぎじゃないですかぁ?」と二村がにやりと笑う。


「んな暇ねぇよ」


TRRRR…


そんなやり取りをしていると、俺のデスクで内線電話が鳴った。


ディスプレイには秘書課のナンバーが表示されている。


「はい。外資物流事業部、神流です」


真面目に電話に出ると、


『お疲れ様です。秘書課の瑞野です』と控えめな応答があった。


用件は会長行きに提出した書類にいくつか不備があったらしく、その確認に来て欲しいとのことだった。


「すぐ行くよ」と返事をして、電話を切ると佐々木と二村が俺を注目していた。


「何だよ」と俺が二人を睨むと、佐々木は慌てて「いえっ」と顔を背ける。


一方二村は、いつもにこにこトレードマークの笑顔を拭い去り、無表情に俺を見据えていた。


何だよ。


そう思って睨みを利かせたが、こいつはたじろぐことなく、俺をまっすぐに見てそしてまた似非臭い笑顔を浮かべる。


「いえ。それじゃ俺は自分の部署に戻りますね~」


そう言ってそそくさと帰っていった。





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